開発秘話vol.5 いろポチ


色がわかれば、服を自分で探せるのに。
いろポチが視覚障がい者の自立をサポート。

副資材を通じて社会貢献できることは
フクイにとってチャンスでもありました。

 2014年春、日本アパレル工業技術研究会のメンバーを通じ、フクイに視覚障がい者支援ツールの生産開発依頼がありました。コンタクトしてきたのは日本女子大学の佐川賢工学博士で、触覚タグという概念の研究を続けてきており、実現に向けて道筋が見えてきた時点でのお声がけでした。もとより副資材を通じてCSRに前向きであった当時の常務が二つ返事で了承し、フクイの開発部と佐川博士の二人三脚が始まりました。  視覚障がい者は全国で約30万人、後天的視覚障がい者まで含めると100万人いると言われています。こうした人たちは色は見えないものの、自分の着る服の色を知りたいという強い要望があるそうです。特に女性は自分の着るファッションに関心が強く、配色やコーディネイトを自分で決めたいと考えています。洋服のタグを作ってきたフクイとしては、ぜひサポートしたいと、協力することを即決したのです。

色名の点字表記ではなく、言語に頼らず
色を認識できるよう工夫しました。

 目の不自由な方が「触って色を認識できるタグ」と聞けば、ほとんどの方は点字で色の名前を表記すると想像されるのではないでしょうか。佐川博士の研究してきた触覚タグは、点字表記ではありません。色彩の情報をマンセル色相環に沿って円形に配置し、対象となる色を示す部分に指先で感じることができる目印を置くというものです。この方法によって、単に点字で色を表記するよりも色同士の関係性を直感的に理解でき、晴眼者と色の概念を共有したり、類似色を理解して洋服のコーディネイトに活用することができます。佐川博士の実験によると、先天的全盲視覚障がい者の持つ色の理解(青と赤は遠い関係・赤は熱い印象を持ち、橙は暖かい印象など)をマッピングしていくと、ほぼマンセル色相環に重なることがわかりました。全盲の方であっても晴眼者と同様に色を色相環で理解できるので、色を表示する方法としては点字よりも言語的にバリアフリーで有効なのです。

誰もがコーディネイトを楽しめるように…
いろポチは未来をサポートしたいのです。

 最初の難関は指先ではっきり感じ取れる形状を、タグの上にどう作るかでした。エンボスで凸点を作るのか厚盛プリントで作る方が判別しやすいのか。また、タグ自体は洋服につけるものなのでサイズはある程度小さくなります。その小さな面積の中で、対象色を見つけるには、凸点を大きくして他の色と差別化するか、ドーナツのような形状にするべきか。次々に試作を重ね、最終的には凸点は厚盛プリント、対称色を示す箇所はレーザーで穴をあけるのが一番判別しやすいということがわかりました。試作が形になり始めたころから、各種のメディアで取り上げられ、毎日新聞を皮切りに東京新聞、読売新聞、日本経済新聞、朝日新聞などに掲載され、電波媒体ではTBSラジオやNHKテレビ「おはよう日本」で特集放送が行われました。商標は最終的に「いろポチ」になり、マスコットのポチ子ちゃんはLINEスタンプとしても活躍しています。  いろポチは点字による色判別ではないため、どこの国でも使えます。世界のスタンダードを目指し、すべての服につけてもらいたいと考えています。色やおしゃれを楽しみ、人々が幸福で豊かな社会を共有できる未来へむけて、いろポチの普及を進めていきます。